#24 ねこに踏まれながら住む/Live under the cat’s foot

【ぼく】12月19日
こかりが最近、手相にはまっている。ことあるごとに「ちょっと手を貸して」と言いながらぼくの手を掴み、じーっと見入る。「どう? 長生きしそう?」とか、「来年こそ大きな仕事が入ってくるって書いてある?」とか、冗談半分に訊いても、なぜか、何一つ答えてくれない。終始一貫、無言のままひたすらぼくの手のひらを凝視するだけ。
こかり式手相占いは、はじまりと同じくらい唐突に終了する。毎度決まって、5分程じーっと人の手のひらを見た後、突然我に返ったように「あ、洗濯物干さないと」とか「あ、メールの返信忘れてた」とか、何かしらの言い訳とともに去るので、残されたぼくはなんだか不安な気分になる。それに、聞こえないと思っているのか、時々手相を見ながら小さいため息をついたり、眉間に深いシワを寄せたりする。
考えてみたら、これってホワンのある行動に似ていた。ホワンも時々、ポーカーフェイスで近づいて来ては、目にも止まらぬ速さでぼくの手を、前足でロックし、怒涛の連続蹴りを入れてくるのだ。いつもあまりにも唐突なので固まってしまい、叱ろうと思った時にはホワンはもう満足するらしく、何事もなかったように去っている。あの、通り魔的なぼくの手の弄び方は、こかりの悪徳占い手法とほんと、そっくり。みんな、ぼくの手を軽々しく扱いすぎる! 仕事が順調な時は、「黄金の右手だから大切にしないとね」なんて言っていたクセに、仕事がなくなればこの扱い。
そういえば、さっきもこかりにゲリラ手相占いをされたんだけれど、今日はめずらしく一言だけコメントがあった。「イラストもいいけれど、そろそろ何か新しいことに挑戦するのもいいかもしれませんね」って。こかりからしたら、それほど真剣な意味で言ったわけじゃないかもしれないけれど、目の前が真っ暗になった。たぶん、何があってもこかりだけは、ぼくがイラストレーターを続けることに対しては味方であってくれると思っていたからかもしれない。ぼくが甘えているだけだってことも、現状の自分の不甲斐なさもわかっているつもりだったけれど……それでも。

【ミー】December 21st
リーセントリー、コカリとタイラーがラブ。前はそんなことしなかったのに、いつもホールドハンズしている。ストレンジ。それに、ホールドハンズしながら、コカリはずっとサイレント、ミーが「ミャー」と言ってもイグノア、じっとタイラーのことばかりステアしてる。タイラーのアグリーなフェイスを見て何が楽しいんだろう。
コカリは時々、タイコーともホールドハンズするのに、ミーのハンドは、ホールドしようとしない。ビジーな時にはいつも「もう、ねこの手も借りたい、ね、ホワンちゃん貸してよ~」とか言うのに。タイコーが来てから、コカリはミーに少しコールド。
ミーはロンリーボーイじゃないし、ホールドハンズしてほしいわけじゃないけど、ソファにいたコカリのアームにハンドをのせた。コカリはうれしそうに「なになに、ホワンちゃんも手相を見てほしいのかね? どれどれ」とか言いながらミーのハンドをやさしくホールドしてくれた。「ふむふむ、良い肉球をしていますね、ホワンちゃん長生きしますよ~。これからもずっと一緒よ」って言いながらやさしくマッサージしてくれた。やっぱりコカリは、ミーにラブなんだ。
コカリのハンドがウォームで気持ちがよかったので、ミーがゴロゴロ言っていたら、タイラーがやってきた。「あはは、コカリはとうとうねこの手相まで見られるようになったのか」なんて言ってバカにするので、ミーはいつものようにタイラーのハンドをロックして、キック。ああ、なんて気持ちがいいんだろう、エキサイティング。キックをしていると、ミーの中のアニマルがアウェイクする。ここには、タイラーしかエネミーがいないからつまらない。またラットやバードをハントしたい。このハウスは、ミーにはピースフルすぎる。

