10 一人遊び

 最近、一人で映画館に行けない、一人でご飯屋さんに入れないなど、単独で行動するのが苦手だという方が一定数いるらしいとの情報を耳にしました。

 

 僕なんかは大勢での食事が苦手で、むしろ一人で居ることに(よろこ)びを感じるので、人間というものは本当に多種多様な生き物だなと感じるのですが、では何故(なぜ)、自分は単独で行動していても、特に何も思わなくなったのだろう……と思い返したところ、それは、子供の頃に一人遊びをよくしていたからかもな、と思いました。

 

 ぼっちは一人遊びが上手になります。

 

 遊び相手が居ないのですから、自分で創意工夫をしなければなりません。どうすれば面白くなるか、どうすれば飽きないか、試行錯誤の積み重ねによって自然と一人遊びが上手(うま)くなっていくのです。

 

 そんな時、テレビゲームは最高のお供になるわけなのですが、例えば新しいゲームを買うのには当然お金がかかりますし、またある程度楽しんでしまうと新鮮味を取り戻すためにしばらく()を置くことが必要になります。また、「ゲームばかりして!」と親に怒られる場合もあり、最悪の場合は電源アダプターを隠されてしまうケースに発展しかねません。

 

 さて、そうなると遊び方は『なるべくお金がかからないもの』に限定されます。

 

 僕が実際にやっていた遊び方を一部挙げますと、左右の手を人間に見立てて戦わせたり、ボールペンを分解したり合体させたりというインドアなものから、小さなおもちゃのバスケットゴールを取り付けての一人バスケ、壁にボールを投げてキャッチする一人野球などのスポーティーな遊びもあります。

 

 一人遊びのポイントは、自分好みのシナリオを(つく)ることです。

 

 ただぼんやりと遊んでいるだけではすぐに飽きてしまいますし、例えばスポーティーな遊びの場合、そもそも一人遊びをする人間は運動神経が優れていない場合が多いので、技術の向上を目的としてしまうと長続きしません。

 

 そこで必要になるスキルが『ストーリーを創造する力』です。

 

 分かり(やす)い例を挙げると、一人バスケットであれば、弱小チームに所属した自分が強豪チームに挑む、といったようなストーリーを用意します。

 

 そうすることで遊びの密度はグッと濃くなり、時間つぶしの単なる一人遊びでは終わらず、次の試合、そのまた次の試合と物語が(つな)がっていくものになるでしょう。

 

 弱小チームなので、時には負けることもあるでしょう。

 

 両チームの力量、そして試合の流れを真剣に考えれば考えるほど「これでは勝てない……」という壁にぶつかると思います。そこで、起死回生の一手が(ひらめ)くのならばよいのですが、そうではなかった場合、無理に勝とうとしてはいけません。
 勿論(もちろん)、勝つも負けるも自分の(さじ)加減なのですが、だからこそ(うそ)()いてはいけないのです(そもそも自分はバスケットが出来ないという点には目をつむる)。

 

 試合に負け、項垂(うなだ)れるチームメイトと共に、また練習に励みましょう(正確には練習風景を想像するだけです)。そうすることにより、貴方(あなた)のチームはより一層強くなることでしょう。

 

 こんなふうに毎日繰り返しのように遊んでいたので、気が付けば一人遊びが上手になっていました。きっと、この積み重ねにより、一人で過ごすことが苦にならなくなってくると思います。

 

 ただ、唯一問題点を挙げるとするならば、一人で遊ぶのが得意になり過ぎて、常に協調性を求められたり、自分の想像通りに進まない『誰かと遊ぶ』という行為が下手糞(へたくそ)になってしまう点でしょうか。

 

 誰かと共に時間を過ごすのもまた、訓練が必要なのだと思いました。

 
 

教訓
一人遊びは、創造力が命──賽助

毎月第2、第4火曜日更新

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賽助プロフィール

賽助(さいすけ)
東京都出身、埼玉県さいたま市育ち。大学にて演劇を専攻。ゲーム実況グループ「三人称」のひとり、「鉄塔」名義でも活動中。また、和太鼓パフォーマンスグループ「暁天」に所属し、国内外で演奏活動を行っている。著書に『はるなつふゆと七福神』(第1回本のサナギ賞優秀賞)『君と夏が、鉄塔の上』がある。
●「三人称」チャンネル
ニコニコ動画 https://ch.nicovideo.jp/sanninshow
YouTube https://www.youtube.com/channel/UCtmXnwe5EYXUc52pq-S2RAg
●和太鼓グループ「暁天」
公式HP https://peraichi.com/landing_pages/view/gyo-ten



山本さほプロフィール

山本さほ(やまもと・さほ)
1985年岩手県生まれ。漫画家。2014年、幼馴染みとの思い出を綴った漫画『岡崎に捧ぐ』(ウェブサイト「note」掲載)が評判となり、会社を退職し漫画家に。同作(リニューアル版)は『ビッグコミックスペリオール』での連載後、単行本が2018年に全5巻で完結した。その他の著書に『無慈悲な8bit』『いつもぼくをみてる』等。Twitter上でも1頁エッセイ漫画『ひまつぶしまんが』を不定期に掲載。