9.アートと、梅と、あんみつと ~自分をリセットする場所を持つ~

自分の機嫌は自分でとりたいもの

 

ようやく梅雨(つゆ)が明けそうですが、今年の雨は長かったですね。最近の大雨には注意が必要ですが、この時季の気分転換に、私は美術館によく行きます。先日は、森美術館(東京・六本木ヒルズ)の「塩田(しおた)千春(ちはる)展:魂がふるえる」に行ってきました。

 

塩田千春さんはベルリン在住の現代美術家で元々は舞台美術を手がけていたそうです。今回の展覧会は、大きなインスタレーションをはじめ、映像、写真、ドローイング、舞台美術など、塩田さんの25年にわたる活動を体感できる大規模なものでした。

「塩田千春:魂がふるえる」展へ行ってきました(森美術館、10月27日まで)。

現代美術は難しいと思われがちですが、理解などしようとせずとにかく見てみる。要は「好きか嫌いか」「美しいと思うか、違和感を感じるか」それだけです。日常では感じられない感覚が心の刺激になります。気持ちが悪いと感じてもいいし、同じ作品を見ても感じ方は人それぞれ。また、見に行ったときの自分の気持ちにもよります。日頃のこんがらがった気持ちやモヤモヤをフラットにするくらいの感じで現代アートを鑑賞してみてはいかがでしょうか?


赤い紐に吊るされた古いトランクがアトランダムに動く不思議な作品。

今回見た塩田千春展でもいろいろな気持ちになりました。血管のように会場中に張り巡らされた赤い糸や、黒く焼け()げたピアノなど、生きている世界と死んだ世界の間の曖昧(あいまい)なゆらぎのような感覚。ベルリンの子供たちへのインタビュー映像作品「魂について」も興味深いものでした。


日常では感じられない感覚が心の刺激になります。

展覧会を見た後は、六本木ヒルズの展望台、東京シティビューへ。52階に上がると、目の前に、東京の街並みが広がります。私はここに来ると、自分をリセットできるんですね。嫌なことがあっても、怒っていても、悩みがあっても、ふっと心の(もや)が晴れます。かなり上から東京の街並みを俯瞰(ふかん)することで、自分の悩みなんてちっぽけだな、自分なんてちっぽけなんだという気持ちになるのかもしれません。それは一瞬のことで、実際に悩みが解決しているわけではないですが、少しの間でも心を解放できたらいいですよね。

 

自分をリセットできる場所や方法を持っておくのは、私たち大人にとって、大事なことだと思います。友人に相談したり、家族に愚痴(ぐち)ることも、ときには必要。でも、自分で自分の機嫌をとることができたら、より自由になるし、ラクになる。私の場合は六本木ヒルズの展望台ですが、そういう、自分だけの場所を持つことをオススメします。何かあったらあそこへ行けばいいと思えるから、心強いんです。

私とほぼ同じ年の東京タワー。ずっと見上げて育ったので、上から見下ろすとまた違って見えます。

美術館も展望台も好きな私は、年間パスポートを持っています。森美術館と展望台(東京シティビューと屋上スカイデッキ)が、6000円で、1年間行き放題。数回行けば元がとれますから、私にはとってもありがたいパスポートです。混んでいるときも会員専用窓口から並ばずに入れますしね。

 

私はこれを、東京に住むアート好きの若い友達へプレゼントとしてよく贈ります。アートや展望台で、気分転換してもらえたら、嬉しいですね。

 

そのほかにちょっと贅沢(ぜいたく)な気分転換として、赤坂のとらや(虎屋(とらや)菓寮(かりよう) 赤坂店)もオススメです。仕事の合間、青山から赤坂近辺で小一時間程度あいたときなど、気分転換に最適です。昨年リニューアルオープンした気持ちのいい店内で、あんみつをいただき、幸せのひととき。確かにあんみつとは思えない、ランチ以上のお値段ですが、あの空間でいただくあんみつにはその価値はあると思います。もちろんその後の打ち合わせもすごく(はかど)りました。

 

数十年前、まだ母が元気だった頃、毎年大晦日(おおみそか)に二人で改装前のとらやの斜め向かいにある豊川(とよかわ)稲荷(いなり)さんにお参りました。そんなことも思い出しながらまったりするのもよいものです。

赤坂のとらやであんみつをいただくと、久しぶりの晴れ間が出てきて、なんと贅沢なひととき。

 

「梅エキス」作りに励みます!……毎年同じようにできるとは限らないからこそ

 
 

7月のこの時季に取り組むことがもう一つあります。「梅仕事」です。実家では毎年母が梅酒を漬けていて、梅酒好きの父のために、台所の床下収納にはいくつもの大きなガラス(びん)がありました。この時季になると梅を洗い、お尻のヘタを取るのが私の仕事でした。実家を出てしばらく梅酒作りは中断しましたが、ここ何年かFBやインスタを見るとみんな「梅仕事」を再開しているではありませんか! それで私もハマったのが「梅エキス」作りです。

 

梅雨は、梅の実が熟す季節です。「梅雨」の語源は諸説あるようですが、その一つに、梅の原産地とされる中国で、「梅の実が熟すころに降る雨」ということからそう呼んでいたという説があるようです。そういうことを知ると、「梅仕事」をしたくなりませんか?

梅雨の時期、「梅仕事」にハマっています。

私の「梅エキス」の作り方はとっても簡単。梅を洗い、水気をよくふき取り、ヘタを取ります。それをジップロック®に入れて冷凍庫で一晩凍らします。その後、殺菌したガラスの密閉保存瓶に、梅と、角砂糖を交互に重ねていきます。水は一滴も入れません。あとはたまに上下をひっくりかえして待つだけ。1週間から10日で出来上がり! その後、梅を取り出して透明な梅エキスにしてもよいのですが、一瓶はそのまま梅を入れっぱなしにして、琥珀(こはく)色の古い梅酒のようなエキスにするのも私は好きです。

 

梅エキスを、私はソーダで割って楽しみます。かき氷やヨーグルトにかけていただいても美味しいですよね。

 

ただ、この梅エキス、毎年上手くできるとは限りません(笑)。熟す前の固い青い梅を使うと美味しくできるようなのですが、今年は梅が届いたとき、原稿に追われていて、ちょっと熟しすぎてしまったのです……毎年同じようには行きません。だからこそ、毎年チャレンジしようと思うのかもしれませんね。

 

今年は泡盛を使って梅酒もつけましたし、梅干し作りにも挑戦してみるつもりです。

これが今年の「梅エキス」。ちょっと梅が熟しすぎましたが……こんな年もあります(笑)。

 

おまけ「大人ロンドン旅」予告 行ってきました、ロンドンに!

 
 

毎年夏にハイド・パークで開かれるミュージックフェスティバル、数年前、ローリングストーンズが出たときも最前列で見たのですが、今年のニール・ヤングとボブ・ディランは、流石に寄る年波に負け、ソファー席でゆったり見られるGARDEN VIP席でビールやロブスター、ポテトフライをいただきながらゆっくり見ることにしました。

 

がっ! やはり大好きなニール・ヤングのときはエリアの最前列に行っていました。夜9時を過ぎてもまだまだ明るいロンドンの夏ですが、ボブ・ディランが佳境(かきよう)に入る頃にはすっかり辺りも暗くなり、いい感じに。ずっと立ちっぱなしだったので急に足腰にきてソファー席に移り、まったり見ることにしました。雰囲気たっぷりのロンドンの夏の夜を満喫しました。

 

欲張らず、最前列にこだわらなくなったのもすっかり大人になった証拠ですよね。次回は、ロンドン最新ご飯事情とお買い物事情をお届けする予定です。お楽しみに。

 

大好きなロンドンの夏の夜を満喫しました。
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    どうぞ、よろしくお願いいたします!
     

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地曳いく子(じびき・いくこ)プロフィール

地曳いく子(じびき・いくこ)
1959年生まれ。『non・no』をはじめ、『MORE』『SPUR』『Marisol』『eclat』『Oggi』『FRaU』『クロワッサン』などのファッション誌で30年以上のキャリアを誇るスタイリスト。著書に『50歳、おしゃれ元年』『服を買うなら、捨てなさい』『着かた、生きかた』『ババア上等! 余計なルールの捨て方 大人のおしゃれDo&Don't』『ババアはつらいよ アラカン・サバイバルBOOK』『おしゃれも人生も映画から』『おしゃれ自由宣言!』など著書多数。槇村さとるさんとの動画連載「BBA(ババア)チャンネル byさとる×いく子」も好評配信中。http://gakugei.shueisha.co.jp/yomimono/bbach/01.html