14 おうちパフェ研究生活

 パフェを自分で作ろうとは思わない。お店でおいしいパフェが食べられれば、十分じゃないか。

 

 ……そういう立場をとってきたが、まさかこんなことになるとは思わなかった。いま、2020年4月半ばに原稿を書いている。首都圏のパフェを主力とするお店のほとんどは、店内でのパフェの提供をストップしている状況だ。

 

 家でパフェを作ってみるか……、気が進まないが。
 気が進まないのは、5年前の苦い思い出があるからだ。一冊目の著作『東京パフェ学』の刊行を記念して行われたイベント(※注1)の企画でパフェのレシピを考案し、実際にそのイベントで販売したのだが、これが大失敗だった。「うまい棒(めんたい味)」と小さく硬いラムネが大きな障害となり、来場客に忘れがたい負の記憶を残すことになってしまった(食べものの恨みは恐ろしい)。以来、もう自分でパフェは作るまい、と誓ったのだ。

 

 自分で作ると言っても、大層なことはできない。インスタグラムで「#おうちパフェ」を検索すると、もうほとんどプロの仕業だろうというような見事なパフェがたくさん登場するが、その仲間入りは一生できそうにない。ふだん料理もお菓子作りもやらない人間が、ではどうやってパフェを作るか。

 

 ただし、パフェは「料理」ではない。ここに希望がある。素材の組み合わせと積み重ねで、パフェは作れる。だから、おいしい素材を買ってくれば、なんとかなるはずだ。……ということで、パフェの材料を探しにコンビニへ行く。コンビニの売り場を怪しまれない程度にうろうろする。アイス売り場、お菓子売り場、チルドコーナーである。

 

 パフェの材料として必要な素材は以下の3つ(3つはないとパフェっぽくない)。

 

 ・さくさくとした食感を担う素材(代表例は「ルマンド」)
 ・ゼリーやプリン、ムースなど柔らかい素材
 ・アイス、シャーベット

 

 フルーツを入れたい場合は、果肉入りゼリーを使ってもよいし、最近はコンビニで一口サイズのフルーツ果肉が売られているから、それを使用してもよいだろう。お菓子中心の「パティスリー系」に寄せたパフェにする場合は、フルーツの使用は必須ではない。

 

 できれば、パフェの主役や軸となるテーマを決めてから買い物に行った方がよい。あらためてコンビニの売り場を見ると、商品点数がとても多いことに気づく。選択肢がある程度絞られていないと目移りして買い物が進まない。それはそれですごく楽しいことだが。

 

 パフェの主役は、できるだけ3種類以上の素材で変化がつけられるとよい。たとえば抹茶であれば、「小枝 抹茶ラテ」、抹茶プリン、抹茶クリームというように、食感や風味の異なる3つ以上の素材を使うのである。そしてなるべくパフェの上から下まで、主役がいろいろな姿で登場する構成をとると、一貫性のあるパフェができる(※注2)

 

 私のおうちパフェ、1作目は「さくらと抹茶のパフェ」、2作目は「マンゴーパフェ」である。
 1作目は以前デパ地下で買ったスイーツの空き容器に、さくら風味のスイーツと抹茶プリンを合わせて盛り付けた。粗い仕上がりだが、テーマに沿った構成ができ、自分で食べるには十分満足のいくものとなった。
 2作目は、100円ショップで買ってきたグラスを使用。マンゴーアイスと冷凍のマンゴーを使ったが、食感が似ていてコントラストがつかず、失敗した。各パーツはおいしいので、失敗しても「まずい!」とはならないのがいいところ。

 

 おうちパフェは思いのほか楽しかった。お店で食べるパフェの場合、「行く→注文する→撮る→食べる」という楽しみだが、おうちパフェの場合は「考える→買う→作る→撮る→食べる」というように、全く別の楽しさが加わってくる。とても新鮮な体験だ。

 

 一方で、自分でパフェを考案し、実際に作ってみると、それぞれの素材の分量やバランスの細かな部分の難しさを感じる。そこが面白さでもあるのだが、絶対にプロには(かな)わない、と思う。ちょっと試食をしただけでは、どういう分量や構成がベストバランスかを判断することができない。作る過程においても、たとえばグラス内に層を順番に重ねていくだけでも至難の業だ。クリームやアイスを盛り付ける際に、どうしてもグラスの内側に触れてしまい、いちいち拭き取らないときれいに仕上がらないのだ。プロの(つく)り手をあらためて尊敬してしまう。美しくおいしいパフェを自由に食べまわれる世界が恋しい。

 


※注1:2015年5月2日に東京カルチャーカルチャーで行われた「東京パフェ学~パフェ評論家、斧屋とその姉、能町みね子のパフェトーク」
※注2:パフェの構造については、#06「パフェのA-B-A構造」も参照のこと。

▲1作目「さくらと抹茶のパフェ」
季節を感じられる筋の通ったパフェに。
▲2作目「マンゴーパフェ」
部分のおいしさが全体のおいしさにつながらず。

毎月第2・4木曜日更新

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斧屋(おのや)

 パフェ評論家、ライター。東京大学文学部卒業。
 パフェの魅力を多くの人に伝えるために、雑誌やラジオ、トークイベント、時々テレビなどで活動中。
 著書に『東京パフェ学』(文化出版局)、『パフェ本』(小学館)がある。