03 五感でパフェを受け止める

 パフェは香りが大事だ。
 パフェは音が大事だ。

 

 そう言ったら、驚かれるだろうか。天邪鬼(あまのじやく)だと思われるだろうか。
 パフェは食べものの中で「SNS映え」の筆頭に挙げていい存在だとは思うし、パフェはまずもって見た目である。その見映えのためにお店は並々ならぬ工夫と努力を重ねている。わかっている。でも、2000本以上パフェを食べてきて思う。パフェって、見映えがいいのは前提条件だよね? そしてそれに注目し過ぎると、パフェの本質的な特徴を見逃してしまう。

 

 五感が総動員される。これが、パフェの魅力の一つである。
 食べものは何でも五感で楽しむことができるが、パフェはその「振り幅」を大きくできる。ここで「振り幅」と言っているのは、色(形)・味・香り・食感それぞれのコントラストのことで、パフェはそれがはっきりしているため、対比や変化を楽しむことができるということになる。

 

 視覚。
 見た目は言うまでもない。華やかに盛り付けることで、色、形の美しさを()でることができる。パフェが他のスイーツや料理と異なるのは、その立体感である。パフェはその多くが縦長のグラスで提供される。これだけでも立体的だが、グラスの上を自由に盛り付けることで、さらに立体感が増すことになる。色鮮やかなフルーツ、(あめ)細工、チュイール、様々に形の異なるチョコレートの飾り……。時に芸術品と称されるのもうなずける。

 

 味覚。
 パフェは甘みがメインと思われがちだが、他の味覚があってこそ甘みが引き立つ。酸味、苦み、時には塩味に辛み。え、酸味はわかるけど、他はパフェとは関係ないのでは……? と思ってしまった人。よろしい、銀座のピエールマルコリーニでチョコレートパフェを食べてごらんなさい。酸味と苦みが、いかにパフェの味わいを奥深いものにしているかがわかるでしょう。

 

 嗅覚。
 さて、香りである。
 特にお菓子屋さんの(つく)るパフェは、どう香らせるかで勝負してきている。そんな匂いがぷんぷんする。ハーブはいいとして、お酒(ワイン香るジュレなんかはもう定番である)、調味料(しょうゆ、わさび、山椒(さんしよう)なんかも入っちゃう)、香辛料(カレーでお目にかかるやつらがパフェ界に殴り込みをかけてきている)。パフェって何なの? 料理なの?
 パフェの上にミントがのっていたら、必ずひとかじりして香りでパフェをスタートさせるのが私のルーティンであったが、最近はひと口食べるごとに、鼻と口のまわりをたゆたう香りに「むふーん、まふーん」と陶酔する。鼻が忙しいのである。

 

 触覚、そして聴覚。
 硬さや柔らかさを感じたり、温度変化を感じたり(たとえばタカノフルーツパーラーは、秋冬に「HOTパフェ」という温かい素材が入るパフェを提供している)。柔らかいものは舌触りとかのど越しということだが、硬さのあるものなら音がする。いわゆる食感である。カリカリ、サクサクする素材が入るかどうか、何を入れるか。音を楽しむというのも、パフェの大きな魅力である。コーンフレークはパフェの定番だが、お菓子屋さんではいろいろな素材を使っている。とりあえずパフェビギナーは「フィヤンティーヌ」という言葉を覚えておいて損はない(薄いクレープ生地を焼いて砕いたもので、シャクシャクとした軽い食感が快い)。どこかで出会うことになるだろう。

 

 パフェは五感で受け止める。その体験を通して、逆に自分の感覚器官のポテンシャルが広がっていく気もする。自分はこんなことも知覚できるのか。その驚きとともに、また新たなパフェと出会いたくなる。
 美しさを愛で、口の中に入れた後は目をつぶって、味とともに香りと食感まで。すべてもらさず楽しんで。

 

▲苦みがもたらす深み。ピエールマルコリーニの「マルコリーニ・パフェ チョコレート」

毎月第2・4木曜日更新

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斧屋(おのや)

 パフェ評論家、ライター。東京大学文学部卒業。
 パフェの魅力を多くの人に伝えるために、雑誌やラジオ、トークイベント、時々テレビなどで活動中。
 著書に『東京パフェ学』(文化出版局)、『パフェ本』(小学館)がある。