01 パフェは食べ物ではありません

 斧屋(おのや)といいます。パフェ評論家をやっています。
 あ、カフェじゃないです。パフェです。
 はい、そうです。パフェ。
 そう。背の高いグラスに盛られたデザートの、あの、パフェです。
 最近食べてませんか?……そうですか。
 その、パフェの、評論家です。一応商標登録もしています。
 だから、いまのところ唯一のパフェ評論家です。

 

 パフェって、食べたことありますよね。
 食べたことない人、あんまりいないと思いますが、食べたことなくても、見たこと、ありますよね。パフェ。
 そのパフェの評論活動をしています。……へんなの。

 

 パフェ評論家はふだん何をやっているのか。
 東京を中心に、おいしいパフェや楽しいパフェを食べ歩いて、その魅力をSNSやラジオで発信することがメインの活動です。要は「パフェの応援団長」みたいなことをやっています。そんなわけで、毎年365本前後のパフェを食べています。1日1本ペースですね。そんなに食べるパフェがあるのか、おいしいパフェがあるのか、飽きないのか、と思われるかもしれません。飽きないです。そして、魅力的なパフェが食べきれないほどたくさんあるのです。実は今、パフェブームなのです。

 

 パフェって、不思議ですね。
 読者のみなさんがパフェを最近食べていないとしたら、それは、パフェが「中途半端」な存在だからかもしれません。
 食事ではないけど、デザートにしては量が多過ぎる。
 だから、一日の中でいつ食べていいのかよく分からない。そんな奇妙な存在です。朝でもない、昼でもない、ましてや夜ではない(本当は夜こそ面白いのだけど)。

 

 語源はフランス語の「parfait(=完璧)」から来ているのに、結局のところ日本独自の文化になってしまっているパフェ。
 パフェって何? と問われると、みんなイメージは思い描けるのに、完璧には説明できない。
「何が入ってたらパフェなの? パフェから中身をどんどん抜いていったら、どの瞬間からパフェじゃなくなるの?」とか、「サンデーとどう違うんですかー?」って小学生に聞かれたら、どうしましょう。

 

 でも、そんなややこしさを吹き飛ばす魅力が、パフェにはあります。
 もちろん今のパフェブームの大きなきっかけは、Instagramを中心とするネット上の画像文化にあります。パフェの見映えの美しさ、かわいさ、華やかさは、個人的には他のスイーツから頭ひとつ分にょきっと抜きん出ていると思います(パンケーキ派・かき氷派の反論はいつでも受け付けます)。でも、視覚的な側面はパフェの魅力のごく一部に過ぎません。もっと言うならば、パフェの魅力は、食文化という(くく)りよりももっと拡張して捉えるべきと考えています。

 

 パフェは、食べ物ではありません。
 パフェは、音楽であり、映画であり、絵画であり、建築であり、文学です。
 つまり、パフェは究極のエンターテインメントです。
 そんなことを、この連載でお伝えしていけたらと思います。

 

 そして、パフェ好きではなかったあなたが、いつの間にかパフェの深みにハマり込んでいたとしたら、私の思う壺です(※壺に「パフェグラス」とルビをふりたい)。

▲ビギナーから、マニアまで。楽しみ方が深化する店。東京・浅草のフルーツパーラーゴトー「本日のフルーツパフェ」

毎月第2・4木曜日更新

更新情報はTwitterでお知らせしています。

斧屋(おのや)

 パフェ評論家、ライター。東京大学文学部卒業。
 パフェの魅力を多くの人に伝えるために、雑誌やラジオ、トークイベント、時々テレビなどで活動中。
 著書に『東京パフェ学』(文化出版局)、『パフェ本』(小学館)がある。